妊娠中の方も今後希望される方もご相談を
妊娠中に初めて発見された糖代謝の異常を「妊娠糖尿病」と言います。高血糖の状態が続くと、母体だけでなくおなかの赤ちゃんにも影響し、様々な合併症を引き起こす可能性があります。厳重な血糖の管理を行い、対策をしていくことが重要です。
川崎市・武蔵新城にあるおばな内科クリニックの院長は、妊娠糖尿病への高い専門知識を有しています。現在妊娠中の方や過去に妊娠糖尿病を指摘されたことがあり、今後の妊娠を希望する方も、皆さんのお力になれればと思います。どうぞお気軽にご相談ください。
妊娠糖尿病とは
妊娠中は、インスリンを効きにくくするホルモンが胎盤から出たり、赤ちゃんに栄養を与えようとして高血糖になったりするため、糖代謝の異常が見られることがあります。妊娠後期になるにつれ必要なインスリンが増えるので、初期から血糖のコントロールを行わなければいけません。
また、ほとんどの場合は出産後に血糖値が落ち着きますが、妊娠糖尿病と診断された方は将来的に糖尿病を発症するリスクが高いと言われています。
妊娠糖尿病の検査と診断基準
検査
妊娠糖尿病の検査では、主に血液検査による血糖値測定を行います。血液検査には随時血糖・空腹時血糖・ブドウ糖負荷検査(OGTT)の3つがあり、その結果から総合的に判断します。
随時血糖
通常通りに朝食と昼食を摂った後に採血を行い、血糖を測定します。
空腹時血糖
食事(朝食)を摂らない状態で採血を行い、血糖を測定します。
ブドウ糖負荷検査(OGTT)
糖分が入った検査用のジュースを飲んだ後、1時間ごと2時間後に採血を行い、血糖を測定します。
※ブドウ糖負荷検査を希望される場合は、事前のご予約が必要です
診断基準
妊娠糖尿病
妊娠中に初めて発見された糖代謝異常です。厳密には、糖尿病直前の状態と言えます。次の基準の1点以上を満たした場合に診断します。
- ① 空腹時血糖値が92mg/dL以上
- ② 1時間値が180mg/dL以上
- ③ 2時間値が153mg/dL以上
妊娠中の明らかな糖尿病
妊娠する前から糖尿病だった場合や、妊娠後に新たに糖尿病を発症した状態です。以下のいずれかを満たした場合に診断します。
- ① 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- ② HbA1cが6.5%以上
※随時血糖値≥200mg/dLあるいはOGTTで2時間値≥200mg/dLの場合は、妊娠中の明らかな糖尿病の存在を念頭に置き、①または②の基準を満たすかどうか確認します
糖尿病合併妊娠
以前から糖尿病と診断されていた方が妊娠した状態です。糖尿病による合併症(網膜症など)が明らかに見られる場合などが該当します。
妊娠糖尿病の合併症
お母さんに起こり得る合併症
- 流産・早産
- 妊娠高血圧症候群
- 羊水過多症
- 難産
- 将来の糖尿病のリスク
- 網膜症や腎症の悪化 など
赤ちゃんに起こり得る合併症
- 胎児死亡
- 胎児発育不全
- 先天異常
- 巨大児
- 新生児低血糖症
- 将来の肥満・糖尿病 など
妊娠中の血糖コントロール
妊娠糖尿病の方や元々糖尿病と診断されている方は、安全に出産するために血糖コントロールを行います。
妊娠中の血糖の目標値
- 空腹時血糖値:95mg/dL未満
- 食後血糖値:食後1時間値140mg/dL未満または食後2時間値120mg/dL未満
- またはHbA1c:6.5%未満、グリコアルブミン(GA)15.8%未満
食事療法について
血糖の目標値を達成するためには、過度に体重が増えてしまわないよう注意しながら、食事療法を行います。妊娠中の極端な食事制限は胎児の発育に影響するので、母体の健康維持と胎児の発育エネルギー量のバランスを考えた適切な栄養配分を行います。また、血糖変動を小さくするために6回の分割食を指導することもあります。
適正な体重増加の目安
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) | |
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やせ | 18.5未満 |
標準 | 18.5~24.9 |
肥満 | 25.0以上 |
BMI | 適正体重増加 |
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18.5未満 | 9~12kg |
18.5~25未満 | 7=12kg |
25以上 | およそ5kgを目安に個別対応 |
食事エネルギー量の目安
週数 | エネルギー量 |
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妊娠初期(~13週) | 標準体重×30kg+50kcal |
妊娠中期(14~27週) | 標準体重×30kg+250kcal |
妊娠後期(28週~) | 標準体重×30kg+450kcal |
薬物療法について
胎盤や母乳から赤ちゃんに影響を与えてしまう可能性を考慮し、妊娠中から産後の授乳期まで飲み薬の使用は避けます。薬が必要な場合は、注射でインスリンを補充します。
すでに糖尿病と診断され治療を受けている方も薬の切り替えが必要なため、すみやかにお申し出ください。
これから妊娠を希望される方へ
現在糖尿病の治療中の方や、以前の妊娠中に妊娠糖尿病と診断された方が妊娠を希望する場合、事前に血糖をコントロールしておく必要があります。食事・運動療法を取り入れ、HbA1cを6.5%未満にしておくようにしましょう。糖尿病網膜症や腎症は妊娠中に悪化することがあるため、妊娠前から厳重な管理が必要です。
また、痩せ体質の方は筋肉量を増やすなどの対策も、妊娠糖尿病の予防につながると考えています。それぞれの体質やご希望に合わせてアドバイスさせていただきますので、妊娠を希望されている方は当院までお問い合わせください。