予防と早期発見が重要です
糖尿病の慢性的な合併症は、数年かけてゆっくりと進行します。かなり悪化するまで症状が出ないため、気づいたときには重篤な状態になっている場合もあります。また、命にかかわるような症状が突然現れる急性合併症もありますが、適切に治療を続けていればめったに起こらないと言われています。
いずれにせよ、合併症を予防するためにきちんと血糖コントロールを続けること、さらに定期的に診断・検査を受け、合併症の早期発見をすることが大切です。
細小血管障害
血糖値が高い状態が続くと、血流が滞って様々な合併症が起こりやすくなります。体の隅々まで張り巡らされた血管は細いものからダメージを受けるので、神経、目、腎臓の順で起こることが一般的であり、これらを「糖尿病の三大合併症」と呼んでいます。
神経障害
とても細い神経は傷つきやすく、特に手や足の長い神経から障害されることが多くなります。手足のしびれや違和感から始まり、様々な症状が見られます。
網膜症
目の網膜が障害され、最悪の場合は失明に至ることもあります。糖尿病の治療を行いながら、眼科での定期的な検査も受けるようにしましょう。
腎症
腎臓内部には細い血管が集まっており、ここが障害されると血液中に不純物がたまってしまいます。透析治療が必要になる原因の多くを占めていますので、早期発見が何よりも重要です。
大血管障害
高血糖は血管の老化を進め、動脈硬化を引き起こします。比較的大きな血管とそれにつながる臓器を障害するので、組織が死んでしまったり命を落としたりするリスクも高まります。細小血管障害と合わせて「六大合併症」と言われることもあります。
脳梗塞
脳の血管が詰まり、脳の組織が死んでしまう病気です。糖尿病の人はそうでない人に比べ、脳の血管が傷つきやすく、脳血管の障害を引き金に死亡するリスクも高いと言われています。手足の片側が動かせなくなる(片麻痺)、うまく話せない(構音障害)などの症状が見られたら、脳梗塞の疑いがあります。緊急の治療を要するので、ただちに救急車を呼んでください。
心筋梗塞
心臓の栄養血管が詰まって酸素や栄養が届かなくなり、心臓の組織が死んでしまう病気です。心筋梗塞の前兆として、階段を上ったり運動をしたりしたときに胸が痛くなることが知られています。しかし、糖尿病の合併症で神経障害が起こっていると痛みに鈍くなり、気づくのが遅れることもあります。心臓が血液を送り出す力が弱まり、死亡率も高くなるので、症状がなくても心電図や超音波検査の結果を確認しておきましょう。
足病変(壊疽)
糖尿病の人は足への血流が悪く、足先の冷えやしびれが出るようになります。さらに進行すると、安静にしていても痛みを感じるようになり、重症例では潰瘍ができたり組織が死んだり(壊死)してしまいます。組織が腐った壊疽(えそ)の状態になると細菌感染を招く恐れがあるため、足を切断する場合もあります。神経障害によって痛みに気づきにくくなっている可能性もあるので、こまめに足の観察を行い、清潔に保つようにします。
急性合併症
年単位で進行する慢性合併症に対し、血糖値が急激に高くなって命の危険が差し迫る急性合併症があります。治療中の方だけでなく、救急車で運ばれるような急性合併症が起こって初めて糖尿病に気づくケースもあります。
糖尿病ケトアシドーシス
インスリンが不足すると血糖値が下がらなくなるので、体は血糖を使えない代わりに脂肪を分解してエネルギーにしようとします。するとケトン体が増え、高度の脱水状態に陥ってしまいます。血糖値が250mg/dL以上まで上がると意識がなくなり、昏睡状態になることもあります。
Ⅰ型糖尿病の人が適切に注射を打てなかったときや、糖尿病以外の病気によっていつもよりインスリンが多く必要になったときに起こります。Ⅱ型糖尿病の人では、スポーツドリンクなどの清涼飲料水や糖分の多いお菓子などを大量に摂取して起こることがあります。
高浸透圧高血糖症候群
糖尿病ケトアシドーシスほどではないものの、血糖値が600mg/dL以上になるとひどい脱水や意識障害を起こすことがあります。特にⅡ型糖尿病の高齢者に起こることが多く、薬を中断してしまったときや嘔吐・下痢による脱水、感染症などの別の病気がきっかけとして発症します。
糖質の多いジュースなどではなく、水やお茶などで水分をしっかり摂る習慣をつけることが予防になります。また、自己判断で治療薬を中止することは避けましょう。